収支の式は3段に分けて置く
民泊の収支でつまずく原因のほとんどは、費用を1つの袋に入れてしまうことです。費用は増え方が3種類あり、分けて置くだけで計算が合うようになります。
| 区分 | 何に比例して増えるか | 主な中身 |
|---|---|---|
| 売上 | 泊めた日数 × 宿泊単価 | 宿泊料。清掃料をゲストから別途受け取る場合はそれも含む |
| 予約1組ごとの費用 | 予約の組数(泊数ではない) | 清掃費、リネン、アメニティ、消耗品 |
| 売上に比例する費用 | 売上の% | OTA(予約サイト)手数料、運営代行の手数料 |
| 固定費 | 泊めなくても出る | 家賃またはローン返済、管理費・修繕積立金、固定資産税、火災保険、損害賠償責任保険、光熱費の基本料金、Wi-Fi、備品の更新 |
いちばん多い計算違いは、清掃費を「泊数」で掛けてしまうことです。清掃は予約1組につき1回なので、平均2泊の宿なら清掃回数は泊数の半分になります。連泊が増えると売上は変わらないまま清掃費だけが減るため、ここは手取りに直接効きます。
180日の上限が、売上の天井を決める
住宅宿泊事業法の届出で営業する民泊は、人を泊められる日数が年間180日までです。毎年4月1日の正午から翌年4月1日の正午までを1年として、実際に人を泊めた日だけを数えます。旅館業法の許可(簡易宿所)にはこの日数の上限がありません。数え方の詳細は福岡で民泊を始めるには? 届出の流れ・180日ルール・物件の確認ポイントにまとめています。
ここから2つのことが決まります。
- 売上の天井は「180日 × 宿泊単価」。どれだけ予約が入っても、届出の民泊でこれを超える売上は立ちません。費用を細かく積む前に、まずこの天井を出してください
- 年間稼働率は最大でも約49%(180日 ÷ 365日)。「稼働率70%」のような数字は、日数制限のない旅館業許可の施設か、1年の一部だけを切り取った数字です。届出の民泊の計画にそのまま当てはめると、売上が2割以上ふくらみます
180日をどの時期に使うかは設計の部分です。福岡の需要が高いのは桜(3〜4月上旬)、大型連休、博多どんたく(5月)、博多祇園山笠(7月)、夏休み、紅葉(10〜11月)、年末年始です。単価を上げやすい時期に枠を寄せられるかどうかで、同じ180日でも売上は変わります。枠の配分と価格設定まで任せる場合は民泊運営代行が対象になります。
稼働率を何%で置くか
一棟貸し・地方型の年間稼働は30〜50%が目安とされています(2026年9月時点で確認した公開情報)。計画を立てるときは、この範囲の下寄りから始めるのが安全です。理由は3つあります。
- 開業初年はレビューがゼロ
- 同じ価格で並んでいれば、レビューのある宿が先に埋まります。立ち上がりの数か月は単価を下げて件数を取るか、稼働を低く見積もるかのどちらかになります
- 福岡は供給が増えている
- 福岡市の民泊は2年で890件から2,028件(約2.3倍)に増えました。許可施設も2025年9月末で230件あります。過去の稼働率をそのまま置くと実態より高く出ます
- 分母を365日にするか180日にするか
- 同じ「稼働率40%」でも、365日の40%(146日)と、販売した180日の40%(72日)では売上が倍違います。シミュレーションでは%ではなく「泊めた日数」で置くほうが間違えにくく、180日の枠の消化状況もそのまま見えます
見落としやすい費用と、手数料の相場
- 清掃費(予約1組ごと)
- 福岡の民泊清掃の相場は、1R〜1Kで3,000円台後半〜5,000円前後、1LDK〜2LDKで7,000円台が中心です。リネンの洗濯やアメニティ補充が含まれるかで実額が変わります(福岡の民泊清掃の相場はいくら?)
- OTA手数料(売上の%)
- 料率は予約サイトごとに違います。使う媒体の最新の料率をそのまま置いてください。複数の媒体に出すなら、媒体ごとに分けて置くと実態に近づきます
- 運営代行の手数料(売上の%)
- 福岡の代行会社の公開情報では売上の15〜25%が中心です(2026年9月時点)。清掃費が手数料に含まれるか別請求かで実質が変わるため、料率だけでの比較はできません(民泊代行とは? 業務範囲・手数料の相場・福岡で任せる前に確認したい7項目)
- 泊めなくても出る費用
- 光熱費の基本料金、Wi-Fi、火災保険と損害賠償責任保険、管理費・修繕積立金、固定資産税。稼働がゼロの月もこれは出ます
- 年単位で必ず出る費用
- 寝具・家電・食器の更新、消耗品のまとめ買い、写真の撮り直し。初年度の計画から抜けやすく、2年目以降に効いてきます
仮の数字で置いた計算例
以下は計算の手順を示すための仮の置き数字です。当社の実績値ではありません。実際の数字は物件・立地・時期で変わります。
前提:2LDKの一棟貸し、住宅宿泊事業法の届出(年間180日まで)、宿泊単価12,000円、予約1組あたり平均2泊、清掃費7,000円/回、OTA手数料は売上の15%、運営代行の手数料は売上の20%、固定費は年間60万円(家賃・ローンを除く光熱通信・保険・備品更新・税の合計として仮置き)。
| 泊めた日数 90日 (年間稼働 約25%) | 135日 (約37%) | 180日(上限) (約49%) | |
|---|---|---|---|
| 売上 | 1,080,000円 | 1,620,000円 | 2,160,000円 |
| 清掃費 | 315,000円 (45組) | 476,000円 (68組) | 630,000円 (90組) |
| OTA手数料 15% | 162,000円 | 243,000円 | 324,000円 |
| 代行手数料 20% | 216,000円 | 324,000円 | 432,000円 |
| 固定費 | 600,000円 | 600,000円 | 600,000円 |
| 手取り | -213,000円 | -23,000円 | 174,000円 |
この前提では、180日を使い切っても年17万円ほどしか残りません。固定費と清掃費が売上に比例しないため、売上が小さいうちは費用が先に立ちます。では何を動かすと変わるのかを、同じ180日のまま2つだけ変えて比べます。
| 変える数字(180日は共通) | 手取り | もとの前提との差 |
|---|---|---|
| もとの前提(単価12,000円・平均2泊) | 174,000円 | 基準 |
| 宿泊単価を18,000円に上げる | 876,000円 | 約5倍 |
| 平均2泊を3泊に伸ばす | 384,000円 | 約2.2倍 |
宿泊単価を1.5倍にすると手取りは約5倍になります。清掃費と固定費が売上に比例しないため、単価の上積みはほぼそのまま手取りに乗るからです。連泊が1泊伸びると清掃回数が90組から60組に減り、これも手取りを2倍以上にします。日数を増やせない届出の民泊では、効くのは単価と連泊の2つです。写真と掲載文、価格の動かし方、最低宿泊日数の設定がそのまま収支になります。
物件を買う前・借りる前であれば、この計算は間取りと住所だけでもお出しできます。候補が複数ある段階での比較にも使えます(民泊開業支援)。
よくある質問
民泊の収支シミュレーションで最初に決める数字はどれですか?
泊める日数と1泊あたりの宿泊単価です。この2つの掛け算が売上の全部で、費用はそこから引くだけになります。住宅宿泊事業法の届出で営業する場合は年間180日が上限なので、売上の天井は「180日×宿泊単価」で決まります。先に費用を細かく積むより、この天井を出してから費用を引くほうが早く判断できます。
民泊の稼働率は何%で置いておけばいいですか?
一棟貸し・地方型の年間稼働は30〜50%が目安とされています(2026年9月時点の公開情報)。ただし住宅宿泊事業法の届出で営業する場合、年間365日のうち泊められるのは180日までなので、年間稼働率は最大でも約49%です。開業初年はレビューがない状態から始まるため、さらに低めに置いてください。福岡市の民泊は2年で890件から2,028件に増えており、過去の稼働率をそのまま当てはめるのは危険です。
運営代行の手数料は収支にどのくらい効きますか?
福岡の代行会社の公開情報では、売上の15〜25%が中心です(2026年9月時点)。注意点は、清掃費が手数料に含まれるか別請求かで実質が変わることです。「手数料15%・清掃費別」と「手数料20%・清掃費込み」のどちらが安いかは、1回の清掃費と年間の予約組数を入れないと比較できません。
年間180日では収支が合わない場合はどうしますか?
日数の上限がない旅館業法の許可(簡易宿所)に切り替える方法があります。ただし構造や設備の審査があり、福岡市内の物件なら窓口は福岡市保健所です。日数を増やす以外には、宿泊単価を上げる、連泊を増やして清掃回数を減らす、という2つの方向があります。清掃費と固定費は売上に比例しないため、単価と連泊はどちらも手取りへの効きが大きい部分です。
本記事は2026年10月22日時点で、観光庁 民泊制度ポータルサイト・福岡県の届出案内・各社の公開料金情報をもとに作成しています。計算例の数字は手順を示すための仮の置き数字であり、当社の実績値ではありません。制度と料率は変わることがあるため、計画の際は最新の公式情報と各社の料金表をご確認ください。