民泊の制度は2つ。「届出の民泊」か「許可の旅館業」か
住宅に人を泊めて宿泊料を受け取る事業は、住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)の届出か、旅館業法の許可のどちらかが必要です。無届け・無許可の営業は違法になります。2つの制度の違いは次のとおりです。
| 住宅宿泊事業法(民泊新法) | 旅館業法(簡易宿所) | |
|---|---|---|
| 手続き | 届出制。要件を満たせば届出で営業できる | 許可制。構造や設備の審査がある |
| 年間の営業日数 | 180日まで | 制限なし |
| 窓口(福岡市内の物件) | 福岡県 生活衛生課 | 福岡市保健所 |
| 向いている始め方 | まず小さく始めたい。住宅をそのまま使いたい | 365日営業で収益を最大化したい |
大阪市や東京都大田区などでは国家戦略特区の「特区民泊」という3つ目の選択肢がありますが、福岡市の特区の規制改革メニュー(令和7年8月末現在・25項目)に旅館業法の特例は含まれておらず、福岡市では使えません。福岡市の公式案内も「住宅宿泊事業法の届出か旅館業法の許可」の2択で説明しています。この記事では、始めやすい住宅宿泊事業法の届出を中心に進めます。
180日ルールの正確な数え方
「年の半分しか営業できない」とだけ覚えていると、収支の計算を間違えます。数え方のルールは観光庁が定めており、次の3点がポイントです。
- 1年間の区切り
- 毎年4月1日の正午から、翌年4月1日の正午まで。1〜12月の暦年ではありません。年度の途中で開業した場合も、次の4月1日正午でカウントがリセットされます
- 「1日」の定義
- 正午から翌日の正午までが1日です。宿泊人数や予約の組数は関係なく、人を泊めた日が1日と数えられます
- 数えるのは実際に泊めた日だけ
- 予約が入っていない日、ブロックしている日、清掃だけの日は数えません。つまり「販売できる枠の上限」であり、稼働率が60%なら180日の枠は約300日分の販売期間に相当します。日数は届出住宅ごとに計算します
180日の枠をどの時期に使うか(桜・大型連休・イベント・年末年始にどう寄せるか)は、民泊の収益を左右する設計の部分です。この設計まで含めて任せたい場合は民泊運営代行が対象になります。
届出までの流れ。窓口は福岡市ではなく福岡県
福岡市内の物件でも、住宅宿泊事業法の届出を受け付けるのは福岡県(保健医療介護部 生活衛生課)です。福岡市の公式ページ自身が、福岡県への届出を案内しています。手続きは国の「民泊制度運営システム」を使ったオンライン届出が原則です。流れは次の5段階です。
- ① 物件の確認
- そもそもその物件で民泊ができるかを確かめます(次の章で詳しく)。ここを飛ばして家具や内装から始めると、届出の段階で止まります
- ② 消防法令適合通知書の取得
- 交付申請書に平面図や登記簿謄本などを添えて、物件の行政区を管轄する消防署に申請します。自動火災報知設備や誘導灯など、建物によって必要な設備が変わり、工事が要る場合は開業時期に直結します。最初に動くべき手続きです
- ③ 書類をそろえる
- 福岡県の案内にある主な添付書類は、不動産番号が記載された登記事項証明書、賃借物件の場合は転貸を承諾したことを証する書面、事前周知報告書(近隣への周知)、そして②の消防法令適合通知書です
- ④ 民泊制度運営システムで届出
- オンラインで届出を行い、受理されると届出番号が発行されます。不明点は福岡県生活衛生課(092-643-3279)に相談できます
- ⑤ 標識の掲示と開業
- 届出住宅ごとに、見やすい場所への標識の掲示が義務づけられています。掲示して営業開始、Airbnbなどへの掲載には届出番号が必要です
なお、届出書類の作成や提出の代行は行政書士の業務です。当社が開業支援でお手伝いするのは、物件の適性チェック、届出に向けた段取りの整理、消防など現地要件の確認、部屋づくりと掲載開始までです(民泊開業支援)。
物件側で先に確かめる3つのこと
届出の手続きより先に、物件そのものが民泊に使えるかを確かめてください。買ってから・借りてからでは遅い確認が3つあります。
- ① 分譲マンションは管理規約。2018年の住宅宿泊事業法の施行にあわせて国の「マンション標準管理規約」が改正され、多くの管理組合が民泊の可否を規約に明記しています。規約で禁止されていれば届出はできません。規約に記載がない場合も、管理組合への確認が必要です
- ② 市街化調整区域は「属人性」。福岡市は、市街化調整区域の住宅で民泊ができるかを「属人性」(農家住宅・分家住宅など、特定の人しか住めない建築条件)の有無で判断すると案内しています。属人性のある住宅で家主不在型の民泊を行うことは、都市計画法上認められません
- ③ 賃貸物件は転貸の承諾。借りている物件で民泊をするには、所有者が転貸を承諾したことを証する書面が届出に必要です。「民泊可」をうたう賃貸物件以外では、まず所有者との交渉になります
福岡市・福岡県の独自規制(上乗せ条例)については、観光庁がまとめた全国の条例一覧(令和3年4月1日時点)に福岡県・福岡市は掲載されておらず、2026年2月更新の福岡県の届出案内にも条例による制限の記載はありません。つまり確認できる範囲では法定どおり年間180日まで営業できます。ただし条例は今後つくられる可能性があるため、届出前に福岡県生活衛生課で最新の状況を確かめてください。
家主不在型は、登録を受けた管理業者への委託が義務です
自宅とは別の物件で民泊を行う場合、ほとんどが「家主不在型」にあたります。ここは法律上の義務が絡むため、開業前に押さえてください。
- 家主不在型とは
- 人を泊めている間に、オーナーが原則1時間を超えて物件を不在にする形の民泊です。自宅の離れや隣接地でない限り、投資用・セカンドハウスの民泊はほぼすべて家主不在型になります
- 何が義務か
- 住宅宿泊事業法第11条により、家主不在型の届出住宅は、国土交通大臣の登録を受けた住宅宿泊管理業者1社に管理業務を委託しなければなりません。居室が5室を超える場合も同様です。例外は、オーナー自身が住宅宿泊管理業者の登録を受けている場合だけです
- 何を見て選ぶか
- 登録番号を提示できること、そして実際に運営している宿の公開レビューです。管理業者の選び方と手数料の相場は民泊代行とは? 業務範囲・手数料の相場・福岡で任せる前の確認7項目にまとめています
当社は住宅宿泊管理業の登録事業者(国土交通大臣(01)第F06281号)です。自社の宿 AKARI・AZETA を福岡市内で開業から運営まで行っており、その実際の数字は自社宿のページで公開しています。
よくある質問
福岡市で民泊の届出はどこにすればいいですか?
福岡市内の物件でも、住宅宿泊事業法の届出先は福岡市ではなく福岡県(保健医療介護部 生活衛生課)です。届出は国の「民泊制度運営システム」を使ってオンラインで行うのが原則です。旅館業法(簡易宿所など)の許可を取る場合は、窓口が福岡市保健所に変わります。
民泊の180日はどう数えますか?
毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までを1年間として、実際に人を宿泊させた日数だけを数えます。1日は正午から翌日正午までで、宿泊人数や予約の組数は関係ありません。予約が入っていない日や空室の日は数えません。日数は届出住宅ごとに計算します。
福岡市に民泊の独自規制(上乗せ条例)はありますか?
観光庁がまとめた全国の条例一覧(令和3年4月1日時点)に福岡県・福岡市は掲載されておらず、2026年2月更新の福岡県の届出案内にも条例による制限の記載はありません。つまり確認できる範囲では法定どおり(年間180日まで)です。ただし条例は変わる可能性があるため、届出前に福岡県生活衛生課で最新の状況を確認してください。
自宅から離れた物件で民泊を始められますか?
始められます。ただし宿泊中にオーナーが原則1時間を超えて不在になる「家主不在型」の民泊は、住宅宿泊事業法第11条により、国土交通大臣の登録を受けた住宅宿泊管理業者への管理委託が義務です。当社は住宅宿泊管理業の登録事業者(国土交通大臣(01)第F06281号)として、家主不在型の物件の管理をお受けしています。
本記事は2026年10月13日時点で、観光庁 民泊制度ポータルサイト・福岡県・福岡市の公式情報をもとに作成しています。制度は変わることがあるため、届出の際は必ず最新の公式情報を確認してください。